キャリアコンサルティングって、何?

とあるキャリアコンサルタントから聞いた話。

試験対策としてのホランド理論の理解と限界

ホランドの六角形モデルも、分かりやすいという点では実に偉大な理論ですね」とS氏は言った。
 分かりやすいということは、学科試験で問題に出しやすいということでもある。現にホランドの理論は頻出であると、S氏は出題傾向を私と同じように掴んでいたようだった。
 つまり、誰が見ても頻繁に出題されているほど、ホランドの理論は重要だ。
 学科試験では、ホランドの理論は、例えば6つの興味領域のひとつをありもしない興味領域に変えて、その間違いを含む選択肢を選ばせる、あるいは回避して別の正しい選択肢を選ぶように出題されている。ホランドの理論は官民問わずさまざまに作成された職業興味検査に応用されているから、もはや訳出の違いで6つの興味領域の名称が変わることはない。例えばそのひとつを「創造的興味領域」などと変更したとして、それが6つの興味領域に含まれないことはもはや明白であって、「芸術的興味領域」とは多分に創造的でありそれを「創造的興味領域」と言い換えて差し支えないのではないか、などとの議論の余地はない。
 日本ではTV番組のディレクターやCMプランナー、コピーライターなどを「クリエイティブ職」などとある種の憧れを込めて呼んだりするから、「創造的」などというのは引っ掛かりやすい間違いだろう。
「6つの興味領域の頭文字を並べてRIASEC(リアセック)と覚えるとよい、なんてことも教えてもらいましたよ。こういう覚え方も試験対策っぽいですね。もっとも、RIASECの最後のCをCreativeなんて覚えてしまったら元も子もないですけどね」
 ちなみにCはConventional(慣習的興味領域)のCであって、最もCreativeに近いと思われるArtisticとは最も遠い領域に位置している。
ホランドの偉大な点は」とS氏は言った。「興味や性質によって、人間も仕事も、職業という点に限ってたった6つの類型に分類したということですね。血液型占いが流行るのと同じ原理かもしれません。人間も仕事も多様であるはずで、現代人はその多様性を表面上歓迎しているはずなのに、一方で多様なものを多様なまま受け入れて理解するのはやはり難しい」
 ホランドがやっていることは、突き詰めて考えるとパーソンズの特性・因子理論から大きく外れていない。自分の興味を知り、仕事の特徴を知り、それが一致したところに適職が存在するということである。
 ところがパーソンズは、多様である人間を、同じく多様な職業に、あたかもぴったりと当てはまるかのような理論を創造した。これが特性・因子理論に対する批判のひとつとなっている。
 現実には、人の特性と職業がぴったりと当てはまるというようなことはあり得ないのは当然である。人には得意なことと苦手なことがあって、得意なことだけをしていればいいような仕事に就ける人は稀である。ほぼ絶無と言っていい。
 一方で、職業にもひとつのことだけをしていればいいというような仕事はない。芸術的な仕事であったとしても、それが仕事として存在する以上は、その中に事務的な仕事や職人的な仕事も含まれてくる。純粋に芸術だけのことに専念できるのは、一部の天才か、あるいは趣味人でしかない。
 ホランドはそれらを、「分野」とか「傾向」といった言葉で輪郭をぼやかして類型化した。それが特性・因子理論より現実的だった点だろう。
 しかもホランドは、興味領域をひとつに限定するのではなく、上位3つの興味領域を並べて表現しようとした。
「これによって、ホランドが240通りもの人間を類型化したなどと思ってはいけません。ホランドのいわゆる『スリーレターコード』で表現できるのは、上位3つの興味領域の組み合わせだけです。だから240通りではなく、20通りが正解です」とS氏は舌鋒鋭く言った。
 確かに、6つの興味領域から上位3つを順番に並べたとすれば、その並べ方は240通りである。しかし、6つの興味領域から上位3つの組み合わせを考えれば、それは20通りに過ぎない。
「しかも、ホランドはこの世の中に存在する職業の方は、『スリーレターコード』で表現したわけではありません。その仕事に含まれる要素を分析して、その上位3つの要素を同じように羅列し、人と職業の『スリーレターコード』が一致するところが適職だなんていう理論ができれば、これは画期的です。ノーベル賞ものですよ。ところが、ホランドの理論は、職業の方は6つの類型のまま。それに対して人の興味は上位3つの組み合わせで表現するのだから、単純に考えて、人は世の中に存在する半分の職業に興味を持つということになります。ホランドの理論は学科試験では頻出であるけれども、こういう限界を踏まえれば、多くを期待してはいけないし、その理論を元にした職業興味検査だって、仕事理解が不足している人に対してのあくまで導入であって、まさにキャリアガイダンスなんですよ」